| 社長 |
「相続税額を計算するまでの流れは、ひと通りわかったような、わからないような…。でも、売上から経費を引いた利益に税金をかける法人税みたいに単純ではないということだけは自信をもってわかったと言えるかな」 |
| 税理士 |
「相続税は、各相続人が取得した財産に課税されますからね。利益に課税される法人税とは計算方法が異なります」 |
| 社長 |
「ところで、相続税額の計算をする上で気になる税額控除があったんだ。配偶者の税額軽減という制度。あれは、配偶者にかかる相続税をまるまる控除できるという制度だったと思うけど、あの制度について少し詳しく説明してもらえる?」 |
| 税理士 |
「はい。配偶者の税額軽減制度は、配偶者が取得した財産が課税価格の合計額に法定相続分を乗じた金額あるいは、1億6,000万円までの範囲内であれば、配偶者には、相続税が発生しないという制度です。このような制度が設けられた背景には、夫婦共有財産という考え方があります。つまり、社長が財産を維持できたのは、奥様の内助の功。だから、社長の財産を奥様が相続した場合には、一定の範囲で相続税は払わないでも良い仕組みにしようとなったわけです」 |
| 社長 |
「なるほど。夫婦共有財産の考え方ねえ。確かに言われてみればその通りだ。相続税は少しだけ人間味があるね。」 |
| 税理士 |
「(笑)。さすが愛妻家の社長ならではのお言葉ですね! しかし仮面夫婦でもこの制度は有効に働くということを付け加えておきましょう(笑)」 |
| 社長 |
「確かにそうだろうなぁ(笑)」 |
| 税理士 |
「しかし社長、この制度は文字通り配偶者の税金を軽減する仕組みではあるのですが、この制度の活用方法によっては、不利になるケースもあるんです」 |
| 社長 |
「えっ!? 税金が安くなるのに?」 |
| 税理士 |
「はい。配偶者の税額軽減は、被相続人の配偶者に認められている制度です。例えば、社長が亡くなった場合には、社長の奥様に認められている制度ということです。では、この制度を活用して、社長が亡くなった場合に、奥様が、社長の財産の半分、つまり法定相続分に応じた額を相続したとします」 |
| 社長 |
「うん。妻が法定相続人の範囲内で財産を取得したということになるから、配偶者の税額軽減によって相続税は発生しないね。相続税が安くなるのだからハッピーだと思うんだけど…」 |
| 税理士 |
「はい。確かに社長が亡くなられた際の相続税については、配偶者の税額軽減によって相続税は少なく済みます。では、次に社長の財産の半分を取得した奥様が亡くなられた場合はどうなりますか?」 |
| 社長 |
「うん? 妻の相続の時には、配偶者の税額軽減が使えないね。ということは、息子達にまともに相続税がかかってしまう訳か」 |
| 税理士 |
「そういうことです。よく『相続税は2度やってくる』と言われます。これは、配偶者の税額軽減を活用するために、奥様に半分の財産を相続させた場合、次の世代であるお子さん達が社長の財産の全てを相続するためには、社長と奥様の2回の相続が必要であるということなんです」 |
| 社長 |
「私の相続の際に相続税負担を少なくしようと考えて、妻に財産を相続させた場合、私の相続の際には良くても、妻の相続の際に大変になってしまう場合があるということか」 |
| 税理士 |
「そうなんです。例えば奥様ご自身が、社長から相続する財産以外の財産を多額にもっている場合には注意が必要です」 |
| 社長 |
「ということは、相続税というのは、私の相続だけでなく妻の相続も含めたところで検討を進める必要があるということだね」 |
| 税理士 |
「まさにその通りです。相続や事業承継は、ファミリーの問題であるということを認識していただく必要があります。ですから、対策の第一歩は、社長を初めとするファミリーの財産、債務についての現状把握を行い、色々なシミュレーションを行うことが重要です」 |
| 社長 |
「なるほどねぇ」 |
| 税理士 |
「はい。特に配偶者に何を相続させるかについては、非常に重要な問題です。例えば、配偶者の税額軽減により相続税が発生しないからと配偶者に自社株や事業用の土地建物など換金性の低い財産を相続させ、相続税が発生するご子息に現預金などを相続させることなどが考えられますが、配偶者が相続した自社株や土地などが値上がりしていくとそれだけ配偶者の財産が増えてしまい、結果、配偶者の相続のときに大変ということになりかねませんからね」 |
| 社長 |
「配偶者には、値上がりする可能性のある財産を相続させない方が賢明ということか。『相続税は2度やってくる』、映画のキャッチコピーみたいだけど、大変勉強になったなあ」 |