| 社長 |
「お陰さまで、相続税・贈与税の仕組みについては、だいたい分かったよ。そこで、そろそろ、事業承継問題の大きなテーマである自社株について、教えてもらおうと思うのだけど…」 |
| 税理士 |
「そうですね。今までは、相続税や贈与税の仕組みについて概略をお話させて頂きましたが、それを踏まえて、いよいよ自社株について勉強をしていきましょう」 |
| 社長 |
「我が社のように上場されていない株式であっても、その価値が計算され、相続税や贈与税の課税対象になるんだよね?」 |
| 税理士 |
「はい。上場されていない株式、いわゆる未上場株式の場合には、その株式を相続した人や贈与した人にとってどのくらいの価値があるのかという視点で、その価値が計算され、相続税、贈与税の対象になります。そこで、相続税評価額を計算する際には、まず、株主の判定という作業を行います」 |
| 社長 |
「株主の判定?」 |
| 税理士 |
「はい。簡単に言えば、その株主が会社の経営に対してどのくらい影響力を持っている株主かということを判定します。そして、影響力については、原則として議決権で判断します。例えば、株主であっても会社の総議決権に占める議決権の割合が低い場合には、会社の経営に対してあまり影響の無い株主であると判断します。逆に議決権の割合が高い場合には、会社の経営に影響を及ぼすことができる株主であると判断します」 |
| 社長 |
「議決権割合が高く、経営に影響を及ぼすことができる株主と議決権割合が低く経営にあまり影響の無い株主では、株式の価値が異なるということ?」 |
| 税理士 |
「はい。例えば、ほとんどの議決権を有している会社のオーナーが所有している株式を後継者に相続や贈与する場合には、株式を相続、贈与した後継者は、会社の経営権を取得したものと考え、会社そのものに着目し、会社の業績や会社の保有する資産などを勘案した評価を行います」 |
| 社長 |
「議決権のほとんどを後継者が握ることになるから、後継者にとっては、会社そのものを取得したと考える方が合理的だね」 |
| 税理士 |
「それに対して、従業員や全くの第三者に極わずかな議決権を有する株式を相続、贈与するような場合には、従業員や第三者は、会社の経営権を取得するわけではないので、それ相応の評価をします」 |
| 社長 |
「なるほど。簡単に言えば、議決権というモノサシで、会社の経営に影響を及ぼせる株主とそうでない株主に区分して、評価方法を分けるという考え方だね」 |
| 税理士 |
「そういうことです。そして、会社の経営に影響を及ぼせると判断された株主を『同族株主』といい、そうでないと判断された株主を『同族株主以外の株主』といいます」 |
| 社長 |
「単純に考えれば、『同族株主』は、会社の経営権も承継することになるから、価値は高め。『同族株主以外』は、会社の経営権は承継しないから価値は安め。こんなイメージになるのかな?」 |
| 税理士 |
「そうですね。ほとんどのケースが、同族株主の保有する株式の価値は、高めに評価され、同族株主以外の株主の保有する株式の価値は、安めに評価されます」 |
| 社長 |
「であれば、私の後継者が、私の保有する株式を相続や贈与により取得すれば、その価値は高めに評価されてしまうことになるね。ところで、会社の経営に影響を及ぼせるかどうかの判定は株主個人単位で行うのかな? だとすれば、私の株式を親族に均等に分散して、株主一人一人で見れば経営に影響を及ぼす株主がいない状況を作り出して、株主皆にとって、安い価値の株式として評価してもらうことができるんじゃない?」 |
| 税理士 |
「残念ながら、そのような状況を作り出すことはできません。会社の経営に影響を及ぼすことができるかどうかは、その株式を取得した株主の親族でグループを作り、そのグループ全体の議決権割合で判断をすることになります。ただ、最終的には株主個人で判断をすることになりますので、親族であっても、状況によっては、同族株主以外の株主が存在するケースもあります」 |
| 社長 |
「そうか。まずは、親族単位で判断されるんだ。ところで、会社の経営に影響を及ぼすことができる議決権割合はどのくらいなの?」 |
| 税理士 |
「はい。この株主の判定は、その判定の流れが大変複雑です。まず、株主で親族グループを作って、50%以上の議決権を有するグループが存在する場合には、そのグループのみが同族株主グループとなります」 |
| 社長 |
「うん。50%以上の議決権を有していれば、当然、会社の経営に影響を及ぼすことができると判断されるね。では、もしも、50%以上の親族グループがない場合は?」 |
| 税理士 |
「はい。次に基準が下がり、30%以上の議決権を有するかどうかで判断します。30%以上を有するグループが存在する場合には、そのグループ全部、すなわち、2グループあっても、そのグループ全部が同族株主グループとなります。もし、30%以上のグループがなければ、15%以上の議決権を有するかどうかで判断します」 |
| 社長 |
「うわっ、悪いけど、今の話は全く頭に入らなかった…」 |
| 税理士 |
「(笑)すみません、つい専門的な知識を披露したくなってしまいます…(笑)荒っぽい言い方をすれば、オーナー一族については、まず、間違いなく同族株主に該当します。つまり、高い株式の評価額になるということを前提に、対策等を検討する必要があるということです」 |
| 社長 |
「最初からそう言ってくれればいいのに…(笑)」 |