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事業承継のすゝめ!
第1回 事業承継とは?
第2回 相続とは?
第3回 遺言とは?
第4回 遺産分割と事業承継
第5回 事業承継と相続税 その1
第6回 事業承継と相続税 その2
第7回 事業承継と相続税 その3
第8回 配偶者と事業承継
第9回 財産評価
第10回 小規模宅地等の減額
第11回 生前贈与のポイント
第12回 生前贈与のポイント2 相続時精算課税制度
第13回 株式の評価・株主の判定
第14回 株式の評価方法2
第15回 株式の評価方法3
第16回 株式の評価方法4
第17回 個人事業の事業承継と法人化
第18回 事業承継と役員退職金
第19回 株式の評価方法5
第20回 相続税の納付の方法
第21回 延納・物納による相続税の納付
第22回 物納の活用方法
第23回 納税資金の調達方法
第24回 納税資金の調達方法 その2
第25回 金庫株と事業承継
第26回 事業承継と保険
第27回 事業承継と保険 その2(役員退職金)
第28回 事業承継と新会社法
第29回 事業承継と新会社法 その2
第30回 事業承継とM&A その1
第31回 事業承継とM&A その2
第32回 事業承継とM&A その3
第33回 事業承継とM&A その4
第34回 事業承継とM&A その5
第35回 事業承継と設備投資
第36回 事業承継と設備投資 その2
第37回 事業承継と設備投資 その3
第38回 従業員持株会
第39回 従業員持株会 その2
第40回 平成19年度税制改正情報
第41回 財団設立による相続対策
第42回 自社株式の物納
第43回 中小企業投資育成株式会社の活用
第44回 事業承継の選択肢
第45回 事業承継と信託
第46回 事業承継の選択肢〜売却〜
第47回 事業承継の選択肢〜MBO・EBO〜
第48回 事業承継と信託 その2
第49回 事業承継と信託 その3
第50回 同族会社株の相続減免
第51回 事業承継と信託 その4
第52回 事業承継と信託 その5
第53回 遺留分と事業承継
第54回 事業承継と任意後見人
第55回 相続税の税務調査 new
■個人事業の事業承継と法人化[連載第17回]
会社組織ではない個人事業の事業承継はどのように行われるかご存知ですか?
社長 「事業承継について、たくさん話をしてもらったけど、これまでは、会社を経営している経営者の事業承継についての話が中心だったよね? 事業を経営しているということから言えば、会社組織にせずに個人で事業を営んでいるケースも考えられると思うんだけど、個人で事業を営んでいる場合は、事業承継について特に考える必要はないのかな?」
税理士 「はい。確かに今までは、株式の話などいわゆる会社を経営している経営者の方の事業承継を中心にお話してきましたが、社長のおっしゃるとおり、事業承継は、会社経営者だけの問題ではなく、個人で事業を営んでいる方についても大きな問題となり得ます。 今日は、少しだけ視点を変えて、個人で事業を営んでいる場合の事業承継についてお話しましょう 」
社長 「うん。でも、個人で事業を営んでいる場合には、会社ではないわけだから、株式は存在しないし、結果として、あの乱暴な類似業種比準価額や純資産価額といった評価方法とは無縁な訳だよね? 事業承継における問題ってどのようなものがあるの?」
税理士 「そうですね。個人で事業を営んでいる場合には、株式はありませんので、類似業種比準価額や純資産価額は関係ありませんね。その代わり個人で事業を営んでいる場合には、事業用の資産一つ一つが相続税の対象になります」
社長 「そうか。個人で事業を営んでいる場合には、いくら事業用の資産であっても、あくまでも個人資産ということなんだね。だから、事業用資産の一つ一つが個人財産として相続税の対象になるということだね」
税理士 「そうです」
社長 「では、事業承継の観点から考えると個人で事業を営んでいる場合と法人化して会社組織にして事業を営む場合では、どちらが有利なんだろう?」
税理士 「これは、まさにケースバイケースでして、一概には言えないのですが、個人で事業を営む場合と法人化して事業を営む場合では、事業承継の観点からいくつか違いがあります。まず、法人化することで所得の分散効果が得られます」
社長 「?? 何だか難しい言葉が出てきたなあ〜。所得の分散効果って何?」
税理士 「はい。法人を設立するときに、現オーナーはもちろんですが、後継者にも一部出資をしてもらうことで所得が分散され、事実上の生前贈与効果が得られるということです。例えば、個人で事業を営んでいるオーナーが利益100を獲得した場合、その利益100は全てオーナーの資産となり、相続税の対象財産となります」
社長 「うん。それはそうだよね。個人事業だからオーナーの儲けは全部オーナーのものだ」
税理士 「それが、例えば、オーナーが70%、後継者が30%をそれぞれ出資して法人を設立した場合、その法人が同じように100の利益を獲得したとします。その利益は、誰のものになるでしょう?」
社長 「今度は、法人で事業を行っているんだから、法人のものだよ」
税理士 「確かにそうですが、事業承継の観点、例えば、純資産価額を考えて下さい」
社長 「うん? 純資産価額は、解散したら株主にいくら戻るかで評価するんだから、100はオーナーと後継者にそれぞれ出資の割合で帰属する。あっ!そうかあ! 後継者が一部出資をすることで、法人の利益の一部は、株式を通じて後継者のものになるわけだ」
税理士 「そうですね。個人事業の場合には、利益100が全てオーナーのものですが、法人設立時に後継者に一部出資をしてもらうことで、先ほどのケースであれば、100の利益は、オーナー70、後継者30となります」
社長 「事実上の生前贈与効果とはこのことかあ。個人で事業を営む場合に比べて30後継者に移せているものね。ちなみに、このような生前贈与効果に対しては贈与税はかからないよね?」
税理士 「はい。もちろんかかりません。あくまでも出資の比率に応じて、後継者のものになっているだけですし、実際に贈与が行われたわけではありませんからね」
社長 「なるほど。法人を設立する際に、後継者が決まっているのであれば、出資構成を工夫することで、事業承継に有利に作用する場合があるということかあ」
税理士 「そうですね。ただし、だからと言って、やみ雲に出資者を増やしてしまっては、例の“株式は後継者に集中すべし”という観点からは好ましくない結果となる場合がありますので、注意が必要です」
社長 「他には何かあるかな?」
税理士 「そうですね。退職金の問題があります。オーナーが亡くなったときに、個人で事業を営む場合には、その個人事業から退職金を払うことはできません。しかしながら、法人で事業を営んでいる場合には、相続人などの遺族に死亡退職金を支払うことができます。死亡退職金は、『500万円×法定相続人の数』の金額については、相続税の非課税となりますので、相続税がかからないお金を残せるという点で有利になります。また、法人契約の生命保険を活用するなどして法人税を軽減しつつ、死亡退職金の準備を行えるのも法人の大きなメリットであると言えます」
社長 「なるほど。ここまでの話だと法人を設立した方が事業承継の観点からはメリットが多そうだなあ」
税理士 「一般的には、そのようなことが言えるかもしれません。しかしながら、法人化することで、個人の資産は株式に変わりますよね。株式はご存知の通り、類似業種比準価額や純資産価額といった乱暴な評価方法で評価されますので、思わぬ税負担を強いられる可能性もありますので、法人化が絶対に有利とは言い切れません。ですから、今現在、個人で事業を営まれている方は、法人化するメリット、デメリットを慎重に検証し、法人化の判断をされることが良いと思います」
社長 「そうだよね。法人化するということは信用度を高めたり、事業を拡大したりといった様々な目的があってのことだから、節税のために法人化するというのは本末転倒だよね」
  
1) 個人で事業を営んでいる場合には、事業用の資産であっても、その一つ一つが個人資産として相続税の課税対象となる。
2) 個人事業を法人化する際に後継者に出資させることで、法人の利益の一部が株式を通じて後継者に帰属することになり、事実上の生前贈与効果がある。
3) 個人で事業を営んでいる場合には、オーナーが死亡した場合に、退職金の支払いができないが、法人の場合には、相続人等に対し、死亡退職金の支払いができる。退職金として支払うことで、500万円×法定相続人の数の金額については、相続税は非課税となる。
4) 節税のためだけに法人化するのではなく、メリット・デメリットを慎重に検証し、判断することが重要。
編集後記
 事業承継を考えた場合に、法人と個人どちらが有利であるか、というお話しでした。事業承継に関係ない場合でも、「法人と個人どっちがよい?」という選択において、法人化することによる節税メリットというものがありましたが、平成18年度税制改正において、この節税メリットがなくなる趣旨の改正案があがっていますので、法人化を検討する際には、これまで以上に慎重なシミュレーションが必要となります。
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