| 社長 |
「後継者が不在である場合、会社をたたむということや、第三者に売却するという選択肢があることを教えてもらったけど、従業員やその家族、それに取引先のことを考えるといずれの選択肢も採りづらいよねえ」 |
| 税理士 |
「さすが、社長は責任感が強いですね。会社をたたんでしまうという選択をされた場合はもちろんですが、第三者へ売却しても、従業員の処遇や取引先とのお付き合いと言った点は不透明にならざるを得ませんよね」 |
| 社長 |
「うん。後継者がいない場合には、やはり、苦渋の選択が必要なのかねえ…」 |
| 税理士 |
「でも、社長のお考えや従業員、取引先のことを知っていて、充分に考えてくれるであろう人間に対しての売却であれば、安心ですよね?」 |
| 社長 |
「それはそうだね。例えば、自分を支えてくれてきた専務や常務といった役員や長年、勤務してくれて取引先のことなどを熟知してくれている従業員なんかであれば安心だよなあ」 |
| 税理士 |
「はい。実は、そのような選択肢もあります。つまり、自社の役員や従業員に会社を引き継いでもらうという方法です」 |
| 社長 |
「おお! そんな方法があるの? 少し具体的に教えてもらえる?」 |
| 税理士 |
「はい。まずはシンプルな承継が考えられます。会社の株式はオーナーである現社長やその一族が所有し続け、社長のポストを自社の役員や従業員に承継して経営を任せてしまう方法です。この場合、現社長やその一族は、大株主として会社のオーナーであり続けることになります。この場合の承継の対価は、現社長の退任に伴う役員退職金と言うことになります」 |
| 社長 |
「なるほどね。社長のポストだけを承継するということだね。確かにシンプルだ。ただ…中途半端にオーナーが残ってしまうと、引き継いだ経営陣はやりにくい場合があるよね。会社の方向性を決める際にも、いちいち、大株主であるオーナー一族にお伺いを立てないといけない…やりにくいだろうね」 |
| 税理士 |
「そのような場合には、役員や従業員がオーナーから株式までを買い取って、完全に会社を承継することもあります。これを、MBOやEBOといいます。MBOとはマネジメント・バイ・アウトの略で、マネジメント、すなわち経営陣による会社の承継をいいます。EBOとはエンプロイバイアウトの略で、エンプロイ、すなわち従業員による会社の承継をいいます」 |
| 社長 |
「なるほど。ある意味、自社の歴史や理念、良いところも悪いところも知っている役員や従業員であれば、承継もスムーズに行くことが多いだろうね」 |
| 税理士 |
「しかしながら、課題もあります。歴史のある会社や業績が良い会社であれば、やはり株価は高く、それを買い取るわけですから、それなりの資金を調達する必要があります。ですから、通常は、役員や従業員で株式を買い取る会社を設立し、銀行やファンドなどから借入などにより資金を調達し、株式を買い取る形で行われます。会社とはいえ、買い取る役員や従業員にはそれ相応の責任が生じますので、しっかりとした計画、つまり、調達した資金をどのように返済していくかですとか、会社を承継するという覚悟が必要です」 |
| 社長 |
「なるほど。いずれにしても、後継者が不在の場合には、いくつかの選択肢について時間をかけて吟味して、後継者がいるときよりも一層の計画性が必要と言えそうだね」 |