| 税理士 |
「さて、新聞記事の話から元の信託の話に戻しましょう。以前、お話しましたように信託といわれる制度が大幅に改正されます。約110年ぶりの大改正です。今日は、具体的に何がどのように変わったのかについて少しお話します」 |
| 社長 |
「うん。そうだね。事業承継に活用できる新しい仕組みもあるということだったものね」 |
| 税理士 |
「はい。まず、目新しい仕組みとして、自己信託と言う制度が挙げられます。自己信託は、財産を信託する委託者自らが、受託者となる信託です」 |
| 社長 |
「うん? 信頼できる第三者に自分の財産を託す制度が信託だよね? 自己信託と言うのは、要は、自分の財産を自分に託しちゃうということ?」 |
| 税理士 |
「はい。かなり劇的な新制度ではあるのですが、欧米では広く認められている制度ということもあり、今回の改正で制度化されました。しかし、かなり劇的な制度ですので、制度の周知徹底を図る目的から、新信託法施行後から1年間は自己信託は認められません」 |
| 社長 |
「なるほど。では、この自己信託は、事業承継などではどのような活かし方があるの?」 |
| 税理士 |
「そうですね。事業承継の場面に限ったことではありませんが、自分の財産を自己信託により、自分自身の固有の財産と信託財産とに分けておけば、自分自身に経済的に何かあった場合でも、原則として、信託財産は影響を受けませんので、確実に次世代に引き継ぐことが可能です」 |
| 社長 |
「う〜ん…。でも、自己信託で財産を囲ってしまって、固有の財産を少なくして、破産しちゃうみたいなことが横行しそうだね」 |
| 税理士 |
「おっしゃるとおりなんですね。そのようなことを防ぐ意味からも、自己信託のスタートは1年間先送りされることになりました。また、委託者が債権者から逃れるために自己信託を利用して、財産を信託財産にしてしまった場合には、債権者は、信託財産に対して強制執行、仮差押えなどを行うことができるようになっています。更に自己信託を設定する際には、様々な手続きが必要とされています」 |
| 社長 |
「そうだよね。そうしないと悪いことに利用されちゃいそうだよね。他にはどのような仕組みがあるの?」 |
| 税理士 |
「目的信託といわれる制度も認められました。目的信託とは、受益者、つまり、信託財産から利益を受ける者の存在しない信託をいいます」 |
| 社長 |
「信託財産から生じる利益を受ける人が存在しない信託? そんな信託に何の意味があるんだろう?」 |
| 税理士 |
「はい。例えば、社長には、まだ、お孫さんがいらっしゃいませんが、まだ見ぬお孫さんに財産を残したいなあなんて思いませんか?」 |
| 社長 |
「ほう。なるほど。まだ見ぬ自分の孫に何か財産を残そうと思っても、まだこの世に存在しないのであれば、遺言は作れないものね」 |
| 税理士 |
「そうなんですね。ですから、その場合には、まだ見ぬお孫さんを受益者とする信託を設定するんです。その場合、お孫さんが生まれた場合には、お孫さんが受益者となりますが、お孫さんが生まれるまでは、受益者が存在しない信託、つまり、目的信託となります」 |
| 社長 |
「何だか、新信託制度は、色々可能性を感じるね。他には何かないの?」 |
| 税理士 |
「まだありますよ。でも、一度休憩しましょう」 |