| 税理士 |
「社長。先日、中小企業庁が中心となって進められていた事業承継協議会から中間報告が出されましたので、今日はその内容について説明させてください」 |
| 社長 |
「事業承継協議会?」 |
| 税理士 |
「はい。昨今の中小企業経営者の高齢化が進展する中で事業承継が円滑に進むように法制や税制について検討を進める趣旨から事業承継協議会が設けられました。その協議会から検討結果について一定の方向が示されたという訳です」 |
| 社長 |
「なるほど。事業承継の円滑化かあ。期待できそうだね。具体的な内容を少し教えてよ」 |
| 税理士 |
「はい。後継者への事業承継を円滑に進めるという観点から、遺留分についての問題提起がされています。社長、遺留分って覚えていらっしゃいますか?」 |
| 社長 |
「う〜ん…。何となくね(苦笑)」 |
| 税理士 |
「(苦笑)遺留分というのは、配偶者や子、親などの直系尊属に認められている相続における最低取得分。つまり、最低保障されている権利です」 |
| 社長 |
「そうだ。思い出したよ。最低保証されている権利だから、その権利より少ない財産しか相続できなかった場合には、最低保証までの取得を主張できる権利だったね」 |
| 税理士 |
「そうです。たとえば、社長に愛人がいたとして、遺言でその愛人に全ての財産を遺贈したとします」 |
| 社長 |
「愛人がいたらの話ね…(苦笑)」 |
| 税理士 |
「そうした場合、相続人である奥様とお子様は最低保障されている権利、つまり遺留分を主張して、最低保障されている分を取得することを主張できます」 |
| 社長 |
「どのくらい認められてるんだっけ?」 |
| 税理士 |
「はい。奥様は本来の相続分2分の1の半分。つまり、1/2×1/2です。お子様も本来の相続分2分の1の半分。つまり1/2×1/2を人数で割った分となります。なお、配偶者のみの場合には2分の1となります」 |
| 社長 |
「なるほど。ところで事業承継の場面で、遺留分が問題になるケースとはどのような場合なの?」 |
| 税理士 |
「はい。遺留分は、相続開始時の財産に加えて、原則として相続開始前1年間で贈与されたものも含めて計算されますが、相続人に対してなされた贈与については、期間制限なしで相続開始時の財産に加えられ、遺留分の計算がされます。しかも、贈与された財産は、贈与時の評価額ではなく、相続開始時の評価額で相続財産に加えられ、遺留分の計算がされます」 |
| 社長 |
「過去に贈与された財産も含めて、もう一度相続開始時の財産を計算し直しましょう。つまり、贈与しなかったものとして、遺留分を計算しましょうということだね。で、何が問題になるのかな?」 |
| 税理士 |
「では、自社株を後継者に生前贈与した例で考えます。相続人は、配偶者と子供である後継者、そして、後継者の弟とします。自社株の贈与を受けた後継者は、一生懸命に経営を行い、相続開始時には、贈与してもらった時点よりも大幅に株価が上昇しましたという場合です。その場合の遺留分の計算はどうなりますか?」 |
| 社長 |
「生前贈与された株式も相続財産に加えられて遺留分の計算がされるよね」 |
| 税理士 |
「はい。ただ、加えられて計算されるだけじゃなく、後継者の貢献によって上昇した株価、つまり、贈与後値上がった価値で加算されて遺留分の計算がされます。つまり、後継者が頑張れば頑張るほど、他の相続人の遺留分を増やす結果になるということです」 |
| 社長 |
「そうか。後継者の頑張りで値上がりした株式の価値で遺留分が計算されるから、結果として他の相続人の遺留分が増えることになるんだ…」 |
| 税理士 |
「はい。場合によっては、他の相続人から贈与してもらった自社株を寄こせと言われかねません。これでは、後継者は頑張る意欲を無くしますし、スムーズな事業承継を行うことはできません」 |
| 社長 |
「なるほど。後継者に株を集めようと思っても、遺留分が邪魔をする場合があるということだね」 |
| 税理士 |
「はい。今回はその問題提起がされています。中間報告では、相続人間の合意によって自社株などの事業用資産を円滑に承継する事業承継契約の創設や遺留分の計算について、自社株については贈与時の評価額で計算の基礎とするなどの提案がなされています。ただ、中間報告ですので、必要な法改正は、これからということになります」 |
| 社長 |
「いずれにしても、遺留分、事業承継を考える上では意識しないとね」 |